こんにちは、ケンです!
令和6年4月1日より保護具着用管理責任者の選任が義務付けられます。
これを踏まえて、今後重要性の高まる保護具着用管理責任者の概要を記事にしました。
まず初めに・・・
労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号。以下「改正省令」という。)が令和4年5月31日に公布され、令和6年4月1日に公布されました。
今回の改正は化学物質の取り扱いに関して、これまでより多くの化学物質を対象とし、
作業者が吸入する化学物質を減少させるばかりでなく、
液体や固体が接触することから作業者を防護することに重点が置かれています。
今回の改正では、事業場で使用する化学物質についてリスクアセスメントを実施した結果、
一定の保護具を使用する場合に保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者のうちから保護具着用管理責任者を選任し、
有効な保護具の選択、保守管理及びその他保護具に係る業務を担当させることとされています。
保護具着用管理責任者の選任要件
保護具着用管理責任者は選任すべき事由が発生した日から14日以内に行わなければならず、氏名を事業場の見やすい箇所に掲示することが求められています。
保護具着用管理責任者は、保護具に関する知識及び経験を有すると認められた者のうちから選任しなければなりません。
この「保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者」には、次の(1)~(6)のいずれかに該当する者が含まれます。
(1) 化学物質管理専門家の要件に該当する者
(2) 作業環境管理専門家の要件に該当する者
(3) 労働衛生コンサルタント試験に合格した者
(4) 第1種衛生管理者免許又は衛生工学衛生管理者免許を受けた者
(5) 作業に応じ特定化学物質、有機溶剤、鉛、四アルキル鉛の作業主任者技能講習を修了した者
(6) 安全衛生推進者の選任に関する基準に該当する者
保護具着用管理責任者の選任要件に該当するものを選任できない場合は保護具の管理に関する教育(保護具着用管理責任者教育実施要領 厚生労働省通達)を受講した者を保護具着用管理責任者として選任するように求められています。
保護具着用管理責任者の職務
保護具の選択を間違った場合、労働者が暴露する有害物質の量が多くなり、健康を害したり、場合によっては死亡に繋がることがあります。
保護具の適正な選択
・取り扱う物質と作業環境や作業方法に応じた適切な保護具の選定
保護具の適正な使用
・労働者への保護具教育及び管理
※保護具着用管理責任者は、労働災害防止のために保護具を適性にしようしなければならないことを労働者に理解させることが重要になります。
保護具の保守管理
・日常的な保守管理を適切に行うこと
保護具の種類・特徴
ここでは「呼吸器用保護具」「保護メガネ」「保護手袋」について種類と特徴を紹介します。
呼吸器用保護具
呼吸用保護具選択の考え方
呼吸器用保護具では、以下の点を留意して選択する必要があります。
有害性評価(作業環境の評価)
・酸素欠乏(酸素濃度が18%未満)の有無
・有害物質の種類
・有害物質の暴露限界濃度
・有害物質の濃度(呼吸用保護具の外側の測定対象物の濃度)
妥当性評価(防護性能の評価)
要求防護係数(PFr)を求め、それぞれの呼吸用保護具に期待される防護係数と比較し、呼吸用保護具の候補の選定する必要があります。
要求防護係数:PFr=Cout/Cin
Cout:呼吸用保護具の外側の測定対象物の濃度
Cin:有害物質の暴露限界濃度
適切性評価(防護性能以外の評価)
適切な防護性能を有する呼吸用保護具の候補の中から、着用者、作業、作業強度、環境等について適したものを選定します。
呼吸用保護具の種類
ろ過式呼吸用保護具
作業環境中の空気をフィルタに通気して有害物質を除去し、浄化された空気を呼吸用保護具の着用者が呼吸に用いる方式の呼吸用保護具になります。
呼吸器用保護具では、着用者が使用した時間を記録し、破過時間を超えないようにろ過材や吸収缶を交換する必要があります。このろ過材や吸収缶のスケジュールの作成は、保護具着用管理責任者の重要な責務の1つです。
〇防じんマスク
種類 | 特徴 | 酸欠 | 粉 じん | 有毒 ガス | |
取替え式 | ろ過材等が交換できる構造 ・吸気補助具付き防じんマスク ・吸気補助具なし防じんマスク | × | 〇 | × | |
使い捨て式 | 製品ごと使用限度時間に達したら、 マスクを廃棄し、新品と交換する | × | 〇 | × |
〇防毒マスク
種類 | 特徴 | 酸欠 | 粉 じん | 有毒 ガス |
防塵機能あり | ろ過材が付いている吸収缶を使用 | × | 〇 | 〇 |
防塵機能なし | ろ過材が付いていない吸収缶を使用 | × | × | 〇 |
給気式呼吸用保護具
作業環境とは別の環境の呼吸可能ガスを呼吸用保護具の着用者が呼吸に使用する方式の呼吸用保護具になります。
〇送気マスク・・・作業場と離れた場所から、ホースを通じて空気を着用者に供給する方式
種類 | 方式 | 酸欠 | 粉じん | 有毒ガス |
エアラインマスク | ・一定流量形 ・プレッシャデマンド形 ・デマンド形 | 〇 | 〇 | 〇 |
ホースマスク | ・電動送風機形 ・手動送風機形 ・肺力吸引形 | 〇 | 〇 | 〇 |
〇自給式保護具・・・作業者が携行するボンベ、酸素発生装置から呼吸用の空気又は酸素を着用者に供給する方式
種類 | 方式 | 酸欠 | 粉じん | 有毒ガス |
空気式呼吸器 | ・プレッシャデマンド形 ・デマンド形 | 〇 | 〇 | 〇 |
循環式呼吸器 | ・圧縮酸素形 ・酸素発生形 | 〇 | 〇 | 〇 |
保護メガネ
保護メガネには、以下のような種類・特徴のものがあります。
種類 | 使用する作業・場面 |
遮光眼鏡 | 有害な紫外放射、強烈な可視光・赤外照射が生ずる作業で使用 |
保護眼鏡 | 浮遊粉塵、飛来物、薬液飛沫などが発生又は発生する恐れがある作業及び場所に立ち入る際に使用 |
レーザー用保護眼鏡 | レーザー放射の拡散反射する場所及び直接のレーザー放射露光を受ける恐れのある作業及び場所で使用 |
顔面保護具 (保護面) | 飛来物、熱、有害光線が生じる作業、場所で顔面を保護するために使用 |
保護手袋
化学防護手袋
有害な化学物質のばく露による皮膚障害や経皮吸収による健康障害を防止するために使用する保護手袋です。
化学防護手袋には以下のような種類のものがあります。
材質 | 長所 | 短所 |
ネオプレンゴム | 耐候性、耐熱性、耐油性がある 酸・アルカリに対して耐性を持つ 強度と柔軟性が高い | 有機溶剤に弱い |
ニトリルゴム | 耐油性及び耐摩耗性に優れる | 酸・アルカリにより劣化する |
ポリビニルアルコール | 有機溶剤に対する耐性が高い | 水分により劣化する |
天然ゴム | 安価で機械的強度に優れる | 油や有機溶剤に弱い |
ポリウレタン | 耐摩耗性、柔軟性に優れる | 加水分解、高湿度下で劣化する |
塩化ビニル | 耐摩耗性、柔軟性に優れる | 熱に強い |
ポリスチレン | 耐薬品性に優れる | 伸縮性がない |
フッ素ゴム | 耐薬品性に優れる | 高価 |
ブチルゴム | 耐候性、耐劣化性に優れる 酸・アルカリに強い | 高価 |
その他の保護手袋
電気回路の作業において作業者の手や手首上部からの感電を防止するために使用するた電気絶縁用の保護手袋があります。
作業者の手や手首上部を切創から守る目的の耐切創用保護手袋があります。
講習内容・カリキュラム
科目 | 範囲 | 時間 |
保護具着用管理 | 1.保護具着用管理責任者の役割と職務 2.保護具に関する教育の方法 | 0.5時間 |
保護具に関する知識 | 1.保護具の適正な選択に関すること。 2.労働者の保護具の適正な使用に関すること。 3.保護具の保守管理に関すること。 | 3時間 |
労働災害の防止に関する知識 | 保護具使用に当たって留意すべき労働災害の事例及び防止方法 | 1時間 |
関係法令 | 安衛法、安衛令及び安衛則中の関係条項 | 0.5時間 |
(実技) 保護具の使用方法等 | 1.保護具の適正な選択に関すること。 2.労働者の保護具の適正な使用に関すること。 3.保護具の保守管理に関すること。 | 1時間 |
まとめ
保護具着用管理責任者の責務、保護具の種類と特徴について解説しました。
保護具着用管理者は、有効な保護具の適切な選択、保護具の管理保守に関する責務が求められます。
ただし、保護具はあくまで作業者に対するばく露低減対策の中で最後に選択すべき方策です。まずは、化学物質の使用量を削減できないか、ばく露低減処置を講じることができないか、などを十分に検討し、その上で適切な保護具を着用することが重要と考えられます。
コメント